QLOOKアクセス解析

黒鳥の歌

息抜きに、小説外伝でも書いてみようかな、と。

現在、工事中です

黒鳥の歌 トップページ

お見苦しいところをご覧に入れております。
現在、この画面は工事中です。
(このページは常にトップに表示します。)
スポンサーサイト

PageTop▲

定期月次会見2016年8月分(9月分?)

定例月次会見

最近、報告事項が何もありません。放置気味になっています。

今、「お題小説」に挑戦中です。インスピレーションがわきましたら、外伝を書こうと思っています。
(書こうとは思っているのですが・・・。)


先週おいでくださいましたお名前不明の方、どうもありがとうございました。
おかげで、シャルロットがジークフリートにミトンとマフラーを渡したのがどの回か、調べずにすみました。
(でも、どの検索ワードで、ピンポイントでそこにたどり着いたんでしょうか?ちょっと興味があります。もし、もう一度おいでの際は、コメントを置いていってくださるとうれしいです。)

PageTop▲

定例月次会見2016年6月

定例月次会見

えっと・・・何の変哲もない毎日を送り、6月も何もありませんでした。

トラックバックテーマ第2131回「電車で眠れますか?」ですが、電車に限らず、どんなところでも眠れる自信はあります。

田舎者なので、「電車ルール」ってよくわからないのですが、学生時代「列車通学」というのをしていたことがありまして、通学列車というのは、貴重な睡眠確保時間と心得ていました。いや、それどころか、朝ご飯も列車で・・・は普通で。そうそう、「年代記」の原稿も、通学列車内でこつこつと書きためておりました。
学生時代、列車って、何でもできるところだと思っていました。
当時通勤されていて、毎日N駅で降りていたおじさま、今ごろどうしておいでかしら。

・・・うーん、懐かしいなぁ。

PageTop▲

定例月次会見2016年5月

定例月次会見

5月分の総括ですが・・・うーん、何もなかったですね・・・。

「日焼け対策」ですか。特に何も変わったことはしておりません。長袖でない服を着ないで外に出ないとか、表に出るときには必ずお化粧するとか・・・(って、対策と言えるかどうか???)。
ですが、最近の化粧品はUVカットが標準装備化しているので、非武装主義者?の自分も、紫外線対策のためなら仕方がありません。
(それって、何の弁解だ?)

PageTop▲

定時月例会見2016年4月

定例月次会見

月例レポート4月分ですが、相変わらず広告が出るまで放っておく状態が続いています。
お花見は終わったんですがねぇ・・・。

ところで、トラックバックテーマ「ヒゲは好きですか?」ですが、一般的に言えば、ヒゲが似合う人ならOKです。
似合うかどうかの基準、ですが、その人の一部として違和感がなければいいと思います。
ちなみに、長髪の男性に対しても同じ基準です。

・・・ただ、似合うと言える人は少ないんですよね・・・。
ですから「嫌いです」と言った方がいいかもしれません。

でも、ほんとうは嫌いじゃないんですよ。「似合えば」OKです。(←ここ大事)

PageTop▲

定例月次会見2016年3月

定例月次会見

多忙につき、本館の方も一つしか記事が更新できない状態でした。

・・・と、ウィルスソフトの月例レポートのような記事になってしまいました。
まあ、例年3月はこんな調子ですから。

でも、4月のうちには、何か短編を一つ、リハビリをかねて書いてみたいと思います。
だれかのところで、何か新しい企画、ないかなぁ?

トラックバックテーマ「お花見行きますか?」---個人的には、通勤につかう道路沿いの桜が結構見事なので、お花見らしいものをあえてしなくてもいいかな、とは思います。今年は、会社のお花見に参加することになりました。ただ、今度の日曜日(4月3日)では早すぎ、来週の日曜日(4月10日)には、満開を過ぎていそうですけどね。

PageTop▲

定例月次会見2016年2月

定例月次会見

おひさしぶりです。
相変わらず多忙につき、おそらく今月の更新もないだろうと思われます。


今月のトラックバックテーマ 第2072回「パンには何を塗りたいですか?」
・・・どのパンかな?
食パンだったら、そのまま食べたい気分です。結構いけます。
ホテルの朝食でよく見かけるあのパン(名前をど忘れしました)なら、バターとストロベリージャムがいいです。

考えてみると、パンには何もぬらない派、かもしれません。

PageTop▲

定例月次会見2016年1月

定例月次会見

新しい年になりました。今年もよろしくお願いします。
さっそくですが、今月も新しい作品の発表はないものと思われます。


トラックバックテーマ 第2060回「来年の抱負は?」ですが、そうですね、鬼に笑われない程度の目標としましては、第四部の二番目の部分(第116章~第125章)をなんとか形にしたいと思います。

・・・なんて、とぼけた答えをしてはいけませんね。
今年の抱負としましては、その前の部分(~第115章---アンジェリークが高校卒業するまで---)を無事に書き上げられればいいと思います。せめて、一ヶ月に1章弱のペースで進められれば目標達成できそうですが、そんなスローペースでは、本当に東京オリンピックが終わってしまいますね。
本筋の話が進まないときは、いくつかスピンオフを書いてみたいと思います。
うーん。思い切った?目標だなぁ・・・。

PageTop▲

定例月次会見2015年12月

定例月次会見

お久しぶりです。
11月分を書くのを忘れたcambrouseです。
今月は、新作発表はない予定です。

今日のトラックバックテーマ。<第2047回「事件の現場を目撃したことがありますか?」>
ないです。
交通事故ならありますけど。巻き込まれて遅刻しました。(確かにお節介なおばちゃんですが、なぜ他人の事故で当事者---救急車を呼んだ---になっちゃうんでしょうね?)

それにしても、第2047回ですか。うちの小説、半永久的に追いつけないですね。

PageTop▲

【小説】あるサラリーマンの独白(その2)

黒鳥の歌

この作品は「scribo ergo sum66666企画」参加作品です。
キーワードは、順不同に「ピラミッド」「名探偵」「ピアノ協奏曲」「マフラー」「シャープ」「モンサンミッシェル」「ガラス細工」です。
 
メイキング記事はこちらになります。
できれば、一読してからお読みになることをおすすめします。



*************************

オレ、何か間違えたと思う。


 家に戻ると、女房と子どもたちは、置き手紙1つ残して出て行ってしまった後だった。
 自分たちのものは持って行ったようだ。残ったものは処分してくれ、と書かれていたから。
 あいつは、社長からオレが会社を辞めると聞いて、出て行ってしまったんだ。
 オレが、ルジツキーコンツェルンを退職したからだ。
 誰が見ても、オレたちは不釣り合いな夫婦だった。もし、オレがポーランドでも5本の指に入るような大企業に勤めていなかったら、あいつはオレを選ばなかっただろうとは常々感じていたが、やはり気のせいではなかった。
・・・そんなことを考えている場合ではない。オレも、この家を出る支度をしなければならない。会社を辞める以上、社宅にとどまるわけにも行かないから。
 新しい家は、新しい女主人が用意してくださっている。
 今晩から、そこに行ってもいいらしい。とりあえず、持って行くものと処分するものを分けなければならない。
 未練たっぷりと思われてもいい。一緒にとったわずかの写真だけは新居に持って行こう。
 かの女がおいていった写真を。
 こんなときなのに、あいつは、きれいに片付けていってくれた。不思議なことに、処分しなければならないものはほとんどない。こうなることを、あらかじめ想像していたのだろうか? いつから別れるつもりだったんだ?
 さすが、もと秘書、というべきか。手回しがよすぎる。でも、自分までわずか2時間で新居に行く準備ができたというのは、出来過ぎだ。なぜ、オレの分まで片付けておいてくれたのだろう? やはり、あいつは、オレにとってできすぎた女房だったようだ。


 新しい仕事は、女主人のボディーガードだ。
 だが、奥さまが出かけることは滅多にないらしく、オレは時間をもてあますようになった。
 毎日、庭でトレーニングをしているが、さすがにこの季節、外にいるのは寒くてかなわない。


 屋敷に来た翌日、さっそく一人、弟子ができたんだ。
 ジークフリート=フィッシャーさまだ。奥さまの友人の息子さんだ。
 彼の母親がイタリア系だそうだ。道理で、ルネサンス時代に書かれた絵から飛び出してきたような、どこか異国風の顔立ちをしているはずだ。もっといえば、黒髪がとても美しい。ほんとうに、このあたりでは滅多にいない美少年だ。
 そんな彼が、弟子入りしたいとやってきたとき、オレは最初は驚いた。彼が弟子入りしたいという理由が、ちょっと想像外だったからだ。
『ぼくには、愛する女性がいます。何があってもかの女を守れる強い男性になりたいんです』
・・・その表情で、その台詞を口にするのは20年、いや10年は早いと思う。
 オレは、強かったけど、愛する女性も愛する子どもたちも守り切れなかった。彼らを守るのに、柔術は何の役にも立たなかったぞ。いや、それで給料をもらっていたのだから、金銭的には生活だけは守れたのかな?
 そう言って、妻子の写真を見せたとき、ジークフリートさまは驚いた顔をされた。
『あなたの奥さまにしては、ものすごい美人なんですね?』
『あなたの奥さまにしては』とは何だよ? とツッコミを入れる気はない。
 確かに、オレたちは”美女と野獣”と揶揄されるくらい、不似合いな夫婦だった。
 だが、柔術が強かっただけで、野蛮な男ではなかったつもりなんだがな?
『それに、お子さまたちも、お母さま似でよかったですね』ジークフリートさまはそう続けられた。
 そういえば、うちの子どもたちを見ると、たいていの人がそう言う。父親に似た、と言ってくれる人はほとんどいない。特に、長男のカロルがオレに似ていると言われたことは一度もない。
・・・これまでは、思い過ごしかと思っていたが・・・。
 ジークフリートさまの様子を見ている限り、悪気はないらしい。というか、彼は、正直すぎる子どもさんだ。


 オレは、ジークフリートさまにはあまり期待していなかった。しかし、彼は案外骨のある人間のようだ。
 オレは、弟子入りしてくる人間には、最初から容赦しない。もちろん怪我をしないように手加減はするが、あらゆる技をかけて相手を倒すことにしている。それでもついてくるやつだけを、オレは相手にした。たいていの人間は、初日でうんざりしてやめていく。だが、ジークフリートさまは、どんな稽古にも決して音を上げなかった。だから、オレは、ジークフリートさまの暴言?の数々を忘れることにした。彼は強くなれないかもしれないが、本気なのだけはよくわかったから。
・・・だが、技をかけるとき「イー」と声を出すのだけは、どうもいただけない。
「えいっ!」と言っているつもりなのだろうが、どう聞いても「イー」としか聞こえない。
 練習風景を見て、続いて何人か弟子入りした人間がいるが、彼らも同じように「イー」と言って技をかける。
・・・オレ、なんか間違ったことを教えたかな?


 それから1週間しないうちに、シャルロットさまが練習着を作ってくださった。綿の素材で動きやすい服装、という指定だけして、絵を描いて見せた。
 オレの絵が上手でないとは思ったが、案の定、ちょっと変わった服を作ってこられた。
『白いキモノ、といわれたんだけど、白は汚れやすいから黒で作ってみたの。でも、帯だけはちゃんと白くしたわ』
 ジークフリートさまには黒いキモノはよくお似合いだ。彼は、どんな服でも着こなしてしまうようだ。だが、執事のユリアンスキーさんはじめ大人たちには今ひとつ似合わない。
 シャルロットさまは、とても手先が器用な方だ。しっかりした縫製で、簡単には破れたりしない丈夫な稽古着ではある。
 だが・・・やっぱりなんか違う。
 しかし、オレの立場で何が言えるんだ?


 オレがコヴァルスキー家にやってきてから2週間後、突然、予告なしにルジツキー社長がやってきた。


 その日、シャルロットさまのところには、先客が来ていた。フリーデマンさまが、ジークフリートさまと一緒に来られ、練習を見学していた。フリーデマンさまが練習場に移ったので、シャルロットさまも一緒に練習を見学することにした。
 しかし、お二人は、まったく練習には興味がないようだ。しかも、ジークフリートさまの視線もお二人の方にばかり向き、ちっとも練習に身が入っていないのがわかる。
 仕方がないので、ちょっと休憩に入った。
 ジークフリートさまは、さっそくお気に入りのマフラーとミトンを身につけられた。体が冷えているわけでもない(むしろ暑いくらい)なのに、不思議な習慣だ。だが、黒装束にそのマフラーの巻き方だと、日本人が見たら忍者だと思うぞ?
 シャルロットさまとフリーデマンさまは、そんなことにも気がつかないようで、フリーデマンさまの新しいピアノ協奏曲の話に夢中だ。
「嬰ヘ長調にしても、変ト長調にしても、オーケストラの人に嫌がられますよ。すなおにヘ長調かト長調になさったら?」シャルロットさまは笑いながらそうおっしゃっているが、オレには何のことやらさっぱりわからない。
「いや、それではピアニストがやりにくいだろう?」フリーデマンさまはむっとされている。
 首をかしげていたら、ジークフリートさまが教えてくださった。
「嬰ヘ長調はシャープ6個、変ト長調はフラット6個使って書かれています。でも、聞く人の立場ではまるっきり同じ音楽です。嬰へと変トは同じ音だからです」
「その説明は正しくない。嬰へと変トは、同じ音ではない」フリーデマンさまはさらに不機嫌そうだ。「少なくても、ヴァイオリニストならそう答えるだろう」
「あら、ピアノで弾けば一緒よ?」シャルロットさまがジークフリートさまにほほえみかけられた。「でも、フラット6個で書いたら、オーケストラの人は確かに嫌がりそうね」
 そんな話をしている彼らの前に、ルジツキー社長が突然現れた。
 なんせ、執事のユリアンスキーさんが一緒に練習しているのだから、誰も案内人はいない。


 社長は、挨拶を終えると、上機嫌でシャルロットさまに話しかけられた。
「・・・その後、スイスへ戻る計画は進んでいるのか?」
 シャルロットさまの表情はぱっと明るくなった。逆に、フリーデマンさまは今までの上機嫌が嘘のように無表情になっておられる。
「いいえ。でも、行こうという決心は変わりません。行き先はスイスではなく、フランスになりそうです。学生時代を過ごしたミュラーユリュードという街に行こうと考えています」
「ミュラーユリュード? 聞いたことがない街だが、フランスのどのあたりだ?」社長は首をひねっている。
「ノルマンディーです。サン=マロとル=アーヴルの中間あたりに位置する小さな街です。モン=サン=ミシェルという観光地から直線距離で50キロほどのところにある、といってもわかりにくいでしょうか?」
 社長は苦笑いした。「聖ミシェル山(モン=サン=ミシェル)という名前は聞いたことがあるが、どんな山だったか忘れてしまったな。有名なスキー場がある山だったかな?」
 それを聞いて、シャルロットさまも困ったような表情をされた。「海沿いにあるので、少なくても、スキー場がある観光地ではありませんわ」
 そして、シャルロットさまも苦笑された。「近くにあるというだけで、実はわたしも一度もいったことがないので、おあいこですね」
 社長は残念そうだった。今度仕事でフランスに行ったら、ついでに、初めてのスキー場でスキーを楽しもうと考えたに違いない。
 実は、彼はスキーが得意で、冬場は年に何度か、仕事を部下に任せてスキー休暇を取るのは、会社では有名なことだ。スポーツ好きで、社員がスポーツをすることにも理解がある。そうでなかったら、柔術のようなそれほどポピュラーでもない競技のクラブチームにまで予算を回したりはしないんじゃないかな。
「・・・ところで、タタミはいらないかね?」社長は、オレを見るといきなりそう切り出した。「タタミなしで、練習に困らないか?」
 うーん、という表情が顔に出てしまったのだろう、シャルロットさまは不審な顔をされた。
「タタミって何ですか?」シャルロットさまがそう訊ねられた。
「柔術の試合や練習の時に使う、カーペットのようなものだ」社長が答えた。
「それは、高価なものですか?」
「日本から持ってくるのだから、かなりの高額・・・」オレはそう言いかけたが、社長は笑って遮った。
「もちろん、差し上げますとも」そう言って、彼は額にしわを寄せた。「実は、うちの柔術クラブのために日本からタタミを輸入しようと思ったのだが、なぜか1000枚も届いてしまって。返品不可だというので、あっちこっちのクラブに寄付したのだが、それでもまだ余ってしまってね・・・」
「1000枚?」
「注文書には、10枚、と書いたはずなのだが」社長はちいさくため息をついた。「・・・今度の秘書が来てから、いろいろと発注トラブル続きでね。この前は、木製の椅子を50個、特注で頼んだんだが、なぜか木彫りの大型犬が50個も届いてね・・・」
「・・・それも、返品不可で」フリーデマンさまが小声でつぶやいた。
「ガラス細工でなかったので、壊れたものは1つもなかったんだが、逆に、50個全部どうにかしなくちゃならなくなってね・・・」
 シャルロットさまは、なぜかにやりとされた。何か心当たりがおありのようだ。
「ついでに、犬の置物はいらないかな? なかなか立派な犬だ。なんでも、日本では、公園に立派な銅像を置くのだそうだ。それから、寺院の入り口には、必ず一対置かれているらしい」
「ピラミッドの前のスフィンクスみたいなものでしょうか?」ジークフリートさまが社長に訊ねた。
「まあ、そんなものらしいな」社長が答えた。「大切なものを守るには、やはり番犬じゃなくちゃ、ということなのだろうか」
「でも、それは、木彫りの犬ではなく、銅像なんでしょう?」シャルロットさまはなぜか笑っておられる。そして、オレに聞いてきた。
「・・・ピルニさん、あなた、日本に行ったことがあるんでしょう?」
「ええ、試合で、2回ほど」オレは胸を張って答えた。昔から、日本はあこがれの国だ。見るものすべてが珍しく、人々は礼儀正しく、親切だ。
「そのとき、犬の置物を見た記憶は?」
 オレは考え込んだ。犬の置物? 記憶にないな・・・。
 ああ、そういえば、ウエノとかいうところで、公園に犬の銅像があったのを見たような気がする。確か、ツンという名前の犬の銅像で、飼い主らしいでかい男と一緒に並んでいた。だが、寺院の犬の方は、記憶にない。
「・・・ああ、そういえば・・・」オレは口ごもった。
 ちらっと見ると、社長は上機嫌だ。
「幸運を呼ぶ置物らしい。入り口に一対置くのだそうだ。よかったら、2匹、もらってもらえると助かる。できれば、別荘にもおいてもらえるともっとうれしいのだが。うちでも工場の入り口やら、自宅の入り口やらに1対ずつ置いても、なかなか全部はなくならなくてね・・・」社長はまたため息をついた。
「そうだわ! その犬の首輪にルジツキー商事のバラの紋を入れれば、きっと買い手がつきますよ」シャルロットさまが提案された。
「なるほど、《日本から来た幸運を呼ぶ犬の置物》として、店頭に置いてみよう」社長も少し元気を取り戻したようだ。「近頃、トラブル続きで、気が滅入りかけていたが、犬の置物だけでも少しでも現金化されればな・・・」
 そういうと、社長はまたちょっと困った顔になった。「実は、日本には、欲しいものがいっぱいある。たとえば、この前日本に行ったとき、珍しい日本酒を飲んで以来、その酒を探させているのだが、銘柄がわからなくてね・・・。試しに、いろいろ注文してみたいと思ったんだが、外れ品が山ほど届いたら困ると思って、二の足を踏んでいるんだ」
「この前、日本に行った?」シャルロットさまとオレは同時にそう訊ねた。
「つい一月前、ヘラと二人で、松江城の夜桜見物をしてきた。なかなか楽しい旅だった。だが、その話をしても、みな不思議がるだけでね」
「1月に桜は咲きません」シャルロットさまが首をすくめられた。「ポーランドだけではなく、おそらく日本でも」
「そうだろうとも」社長はため息をつき、シャルロットさまに訊ねた。「・・・ところで、あなたは、日本語ができるのか?」
「ええ、少しだけですが。学生時代、日本人の留学生から、日本語を少し学びました」シャルロットさまはほほえんだ。「さっきの話、心当たりがあります。桜の話ではなく、タタミと犬の件です。名探偵ではなくても、ちょっとした日本語の知識さえあれば、解決できる問題ですよ」
 そう言うと、シャルロットさまは、ポケットから手帳と万年筆を取り出し、日本語で「十」と書いた。
 エヘン。オレでも、十はわかる。オレもちょっとは日本語ができる。オハヨとかコニチハとかアリガトとか。
「これが10。こういう風に一本書き足すと」シャルロットさまは「十」を「千」にした。「1000になってしまいます」
 社長は目を丸くした。
「それから、椅子のマジックですが」シャルロットさまは《イス》《イヌ》と書かれた。「こちらの字が椅子で、こちらが犬です」
「よく似てるな。日本人は、ちゃんと区別しているのか?」
「さあ、どうでしょう? 椅子の代わりにイヌの置物が届くくらいですから、日本人でも紛らわしいと思いますよ」
 社長はふうっとため息をついた。
「そうか。日本語は面倒なんだな。今の話を聞かなかったら、無能な人間だと勘違いして、あやうく、新しい秘書を首にするところだった。かの女はなかなか優秀な秘書だと思っていたんでね。頭もいいし、語学も堪能だし、育ちの良さがわかるような物腰だしね。日本でもなかなか由緒ある家の出身だと聞いた。名前は、パトリシア=チャンというんだ。日本人っぽくない名前だと思ったら、パトリシアは洗礼名だそうだ」
『いや、洗礼名以外をとっても日本人っぽくないだろう』というツッコミを入れるほど日本人に詳しい人間は、このときこの場にはいなかった。シャルロットさまのご学友、という日本人女性が一月後にワルシャワにやってくるまで、誰もその怪しい日本人?を疑う人間はいなかった、ことを付け加えておく。
「・・・ところで」社長は咳払いをした。「今日、ここにきたのは、ピルニ君の退職手続きが完了したためだ。本来なら、退職金を手渡そうと思っていたのだが、彼の家庭がおかしなことになってしまったと聞いて、ちょっとお節介を焼こうと思った」
 そう言うと、彼はポケットから大きめの財布を取り出し、その中から紙を一枚出した。
「とりあえず、手形を用意した。一ヶ月分の生活費として」
 ジークフリートさまは手形をのぞき込んで、不思議そうな顔をされた。「あれ? 小切手じゃないんですか?」
 社長はにやりとして、同じ紙をもっとたくさん出した。
「小切手というのは、何ヶ月も先の日付で出すわけにはいかないんだ」社長はジークフリートさまに説明した。「これは、ピルニ君ではなく、アンジェラ・・・彼の妻とその子どもたちの生活費だ。アンジェラがかりにピルニ君と離婚したり、ほかの男性とつきあったりしない限り、下の子が20歳になるまで毎月同じ金額を、かの女に払うことにした。もちろん、彼がアンジェラとよりを戻したとしても、下の子どもが20歳になるまで、毎月手形を渡すことは変わらない。これが、わたしからの退職金代わりだ。この金額を見れば、アンジェラもほかの男性とつきあおうとは思わないだろう」
 そして、社長はオレに言った。「きみのほうは、新しい仕事があるから、わたしからの送金がなくてもやっていけるよね?」
 オレはうなずいた。でも、表情にでてしまったようだ。
「なぜ、アンジェラと子どもたちに生活費を渡すのだ?と思っているんじゃないかな」社長は笑った。「わたしも、噂は聞いているよ。アンジェラの上の子が、なぜカロルという名前なのか。わたしが洗礼式のとき父親代わりをつとめたのは、子どもの父親がピルニ君ではないからだろう、とかいう無責任な噂を。一つだけ間違いないのは、わたしがカロルの父親ではないということだ。確かに、アンジェラは美人で優秀な秘書だったが、わたしは自分の会社の人間とは、決してそう言う関係を結ばない主義なんだ。アンジェラの子どもたちがなぜかピルニ君と似ていないことについては、わたしのあずかり知らぬ話だがね」
 がっくりとうなだれたオレに、社長は言った。
「少なくても、カロルは君の息子に間違いない」社長は笑った。「君も知るとおり、我が社では、社内恋愛は禁止されている。それなのに、アンジェラは君と結婚することになったから会社を辞めると言ってきた。わたしは、かの女に聞いた。君のどこが気に入ったのか、と。かの女はこう答えた。『いくら断っても、何度でも追いかけてきた人は初めてでした。粘り勝ち、というところですね。彼の柔術の試合を見て納得しました。彼は粘り強い人なんです』」
 それを聞いて、ジークフリートさまはうなずいた。「納得です。先生の戦いぶりは、本当にすごいです。どんな相手に対してでも、粘って粘って、相手の一瞬の隙を突いて技をかけるんです。ぼくも、何度もそれで床に押さえつけられて負けました。寝技っていうんですって。先生の一番の得意技だそうです」
 オレは柄にもなく赤くなってしまった。この場面でその発言は、非常にまずい。別の意味でとらえられる恐れが大だ。その証拠に、社長はにやにやしているし、フリーデマンさまとシャルロットさまもばつが悪そうな表情になった。
「それで、あんなにきれいな奥さまのハートも射止めたんですね。さすがは先生だ」ジークフリートさまは、なぜか自分のことのように喜んでいる。「それを聞いて安心しました。先生なら大丈夫です。毎日毎日奥さまにお手紙を書いて、早く帰ってきて欲しいと訴えればいいんです。先生なら、きっともう一度粘り勝ちできますよ」
「・・・そ、そうかな?」オレは柄にもなく、どもって返事した。
「そうですとも。それに、この約束手形もあなたの味方ですし」
 ジークフリートさま・・・それ、ちっともフォローになってない。その手形さえあれば、オレの力なんて必要ない。だいたい、手形に書かれている金額は、オレが一ヶ月分として渡していた生活費の二倍の額だぞ?
 落ち込みかけてふっと振り返ると、なぜかフリーデマンさまの表情が明るくなっている。《よーし。わたしももう一度がんばるぞ!》という表情だ。なんだろう、オレ、フリーデマンさまを勇気づけてしまった?
 社長も、オレの視線を追いかけ、フリーデマンさまの笑顔に気がついた。
「あなたには、手形は必要ないようだな。ま、がんばれよ」社長はフリーデマンさまの肩をぽん、とたたいて、ジークフリートさまの方を見た。「・・・きみには、そのうち、稽古着をプレゼントしよう。その格好じゃ、まるで忍者みたいだぞ」
「ありがとうございます。でも、ぼく、この稽古着、とっても気に入っているんです」ジークフリートさまも笑顔になった。
「じゃ、そのうち、タタミと犬を配達させよう。それまで、あなたがここにいれば、だが」社長は、シャルロットさまにそう言い、握手して帰って行った。
 オレの手に、重たい紙入れが残された。社長は、20年分の約束手形をおいていったのだ。オレは20年後の日付の手形帳を閉じ、はっと気がついた。
 表紙に、アンジェラの住所が書かれている! なんて手回しがいいんだ?
 顔を上げると、シャルロットさまも同じことを考えられたようだ。
《さあ、早く行ってあげて》シャルロットさまの顔にはそう書かれていた。
 オレは、試合の時にするくらい丁寧な礼をし、その場から駆け出した。


 それからどうなったか、って?
 シャルロットさまのお屋敷の玄関に、一対の犬の置物が置かれるようになった。ほぼ時を同じくして、玄関に犬の置物を置く家が増え、ルジツキー商事では犬の置物を再発注したが、今度は木の椅子が届いたのだそうだ。
 オレは、毎日毎日アンジェラのアパートに出かけている。かの女は、一度もドアを開けてくれたことはないが、粘っていればいつかはドアが開くと信じている。
 フリーデマンさまも、相変わらず白いバラの花束を持ってシャルロットさまのところへやってくる。今度は、門番に渡すのではなく、シャルロットさまに直に手渡されるようになった。
 今のところ、どちらも目立った進展はない。

PageTop▲

定例月次会見2015年10月

定例月次会見

いつの間にか今年も残すところ2ヶ月とちょっと?になりました。
今月こそ更新したいとは思いつつ、ずるずると半年経ってしまいました。


さて、今回のトラックバックテーマは第2022回「シルバーウィークは何をして過ごしましたか?」ですが、風邪をひいてほとんど寝て過ごしてしまいました。日曜日だけは、お彼岸の初日、ということで来客ラッシュだったのですが、無理がたたったのでしょうか?・・・月曜日からはダウンです。

(「あんたは、昔から連休になると体調を崩すんだから・・・」と実家の母に叱られました。実家に顔を出さなかったばかりか、お墓参りもサボっちゃったし。)

・・・というわけで、こう見えても(あ、ブログでは見えませんよね?)あまり丈夫ではない人間なのでありました。
うちの空気清浄機、昨日までは、「おまかせ運転」にすると「除湿空気清浄」だったモードが、今日は「加湿空気清浄」に切り替わっていました。季節の変わり目なんですね。どうりで咳が止まらないはずです。

PageTop▲

定例月次会見2015年9月

定例月次会見

さて、おかしな天候が続いた夏ももうおしまい、っぽい日々が続いております。
今月こそ番外編を書こう、と思いながら、「予定は未定」という言葉を深ーく迷走瞑想する毎日であります。


トラックバックテーマ第2013回「9月になっても浴衣を着る予定はありますか?」というのが出ているのですが、考えてみるとしばらく浴衣を着ていませんねぇ。かりに浴衣を着るような機会があったとしても普通9月には着ませんよ。いちおう北日本ですしね。

PageTop▲

定例月次会見2015年8月

定例月次会見

毎日暑いですね。夏バテはしていないのですが、今月も更新お休みになりそうです。申し訳ありません。
(・・・って、一ヶ月に一度管理画面を開くのもどうかと思うのですが、それでも訪問してくださっている方には感謝です。)

さて、こちらも恒例となりました”今表示されているトラックバックテーマの答え”です。

第2004回「この夏、電気代を気にしていますか?」

福島県人としては非常識かとは思いますが、この暑さ(全国でもトップクラスなんですよ)で、扇風機がフル稼働しております。犬小屋(兼ツバメさんのマイホーム。本来の用途は駐車場?)にもつけています。来月の電気代の請求書を見るのが怖いですが、うちの場合、夏よりも冬の方が電気代が・・・。
(ちなみに、エアコンはつけていません。)

こんな自分が言うのもなんですが、やっぱり原発には頼らずに電気を作って欲しいです。(←テーマから思い切り外れました。)

PageTop▲

定例月次会見2015年7月

定例月次会見

申し訳ありません。今月は、仕事上の繁忙期で、記事を書く時間がありません。
今月も、更新お休みいたします。


今日表示されているトラックバックテーマの回答。
「忘れっぽいですか?」・・・昔はそんなことはありませんでしたが、今は都合よく忘れ去ることができる特技を身につけました。
よって、先月もその前の月も更新しなかったことなど、きれいさっぱり忘れております。

PageTop▲

定例月次会見2015年6月

定例月次会見

今月もこちらのブログの更新はなさそうです。

本体の方は、なんとか第105章を完成させたいです。

今回のトラックバックテーマの回答ですが、コントレックスは冷蔵庫に2本入っていますが、コンプレックスは切らしております。

PageTop▲

定例月次会見2015年5月

定例月次会見

今月も、更新はないだろうと思います。

トラックバックテーマの回答ですが、好きな色は白です。
ただ、白い服はあまり身につけないかも。
白い花は好きですが、かすみ草とぺんぺん草だけは嫌いです。
(よく、その二つに喩えられるのですが、自分ではそのどちらでもないつもりです。)

PageTop▲

その日、歴史が動いた(嘘)~1919年?2015年?4月9日in松江~

黒鳥の歌


企画ものです。ただし、エイプリルフール企画ではありません。
約一万字ありますが、途中で切れなかったので、このまま掲載します。長いです。
ちなみに、メイキング記事はこちらになります。


 ヴィトールド=ザレスキーは、ドアを開けたとたん、目の前に広がった風景を見て驚いた。
 湖である。しかし、レマン湖ではなかった。見慣れない風景に、彼は一瞬硬直した。
 驚いていると、足下で何かが動いた。
 雑種の茶色い小型犬である。その顔は、どこからどう見てもセント=バーナードだ。こんな小さなセント=バーナードなんて見たことがない。しかも、足の長さに対して胴が長い。その胴体だって、20㎝はなさそうだ。子どもが持つような熊のぬいぐるみを思わせるような、茶色の堅い毛並みをしている。その犬は、ぬいぐるみでない証拠に、彼を見上げて、ワン、と鳴いた。そして、くるっと方向転換して、道路の方にかけだした。
 道路?
 車にしては変な形のものがいっぱい走っている。それも、かなりのスピードだ。それなのに、犬は道路を横切ろうとしていた。
 ヴィトールドは、とっさに、走り出した犬を追いかけた。そして、すんでのところではねられるところだった犬をさっと抱えて道路を横断した。
 その様子を見ていた三人の男たちが、ヴィトールドに駆け寄り、何か言った。しかし、何を言われているのか、ヴィトールドにはわからなかった。
 そのとき、一人の少女が駆け寄ってきて、ヴィトールドに何か話しかけた。犬を指さし、聞いたことがない言葉で話している。
 ヴィトールドはぱっと笑顔になり、「あなたが、この犬の飼い主なんですね?」と言いながら、抱いていた犬を少女に渡した。
 少女は、悲鳴のような声を上げ、犬を受け取った。しかし、その表情はうれしそうだ。ヴィトールドは、不思議そうに少女を見た。
 相変わらず、何を言っているかわからない。それでも、かの女が<スティーヴ>と言っているのは聞き取れた。それで、試しに英語で声をかけてみた。
「英語が話せるのですか? ここはどこですか?」
 少女は、奇妙な顔をした。そして、何か言いながら、彼らを案内するような身振りをした。
 男たちが動き出したので、ヴィトールドも彼らの後を追った。
 彼らの後ろで、そこに集まってきていた何人かの群衆が手を叩いていた。


 ドアを開けると、食べ物のにおいがした。においをかぐ限り、知っている食べ物はなさそうだ。
 男たちは、ヴィトールドと同じテーブルに着き、少女に何か言った。まもなく、彼らのテーブルにはビールのジョッキが運ばれてきた。運んできたのは、どこかエキゾチックな青年だった。ヴィトールドはその青年を見上げ、どこかで会ったことがあるような錯覚に陥った。ヴィトールドは、ビールを断った。すると、彼の前には、水の入ったコップが差し出された。
 そういえば、のどが渇いた。ヴィトールドは、ぐっとコップの中身を飲み干した。何だ、この水は?
「おっ? いけるクチだねぇ」男の一人が、ヴィトールドに向かってそう言った。
「ほんっと、飲みっぷりがいいねぇ」もう一人が言った。
 ヴィトールドは、急に男たちが意味のある言葉を話したので驚いた。青年が二つ目のコップを差し出したので、彼はそれも飲み干した。
「これは、水ではなかったんですか?」ヴィトールドが男たちに訊ねた。
「もちろん、水なんかじゃないですよ」給仕をした青年が答えた。
 少女は青ざめ、おろおろしながら店の主人に言った。「父さん、この人にいったい何を出したの? 水じゃなかったの?」
 店の主人は、カウンター越しに言った。「何度言ったらわかるんだ。<父さん>じゃなく<パパ>と呼びなさい、と。倒産だなんて、縁起でもない」
「そういう問題じゃないわ。この人に、何を出したの?」少女は真っ青になっていた。
「不老不死の水」主人はにやりとして答えた。「日本酒だよ。昨日のおかしな客たちも、これを飲んだら、いきなりしゃべり出したじゃないか。だから、試しに、と思ってね・・・」
 そして、彼はカウンターから出てきて、ヴィトールドに言った。
「・・・もしかすると、あんたは、娘が大好きだというロックバンドのスティーヴさんでは?」
 女の子が好みそうな()固定結束紐ロックバンド、って、どんな紐だろう・・・? ヴィトールドはそう思った。
 店主の言葉に、全員が、ヴィトールドをじっと見つめた。
 なるほど、そう言われてみれば、イギリスのロックバンド<UK3>のベーシストのスティーヴにそっくりだ。だが、彼がお忍びで日本に来ているという話は聞かない。
「いや、違うな。どこか似ているけど、他人ですね」さっきの青年が答えた。「だいいち、兄なら、わたしを無視するなんてあり得ないし。まさかと思うけど、君、スティーヴ?」
「ぼくの名前は、ヴィトールドです」ヴィトールドが答えた。
 青年はビックリしたようにヴィトールドを見た。そして、口を開こうとしたとき、店主が笑い出した。
「ビット?」主人が聞き返した。「ノーノー。いまどき、ビットなんて古い古い。うちのハードディスクだって、テラバイト単位だというのに」
 ヴィトールドを除く全員が笑い出した。
「よし、決まった。これから、あんたのことは<テラ>と呼ぶことにしよう」主人は勝手にそう宣言した。「で、あんた、どこから来たの?」
「ローザンヌです」
「スイスの大都会よ」きょとんとした店主に、少女が言った。
 主人はむっとした顔に戻った。「スイスだと? ふん。またおかしなのを連れてきたな」
 そう言うと、彼はカウンターに戻っていった。
「父さんがスイス嫌いなのは知っているけど、この人は、宍道湖でカピを助けてくれたのよ。だから、お礼をしなきゃ」少女が言った。
「<パパ>だって言ったろ? だいたい、おまえは、宍道湖に行くたびに変なものを連れてくる」主人はまだむすっとしていた。「昨日は、変なポーランド人たちをひっぱってきた。品があるような顔をしていたが、わけがわからないことをいっぱいしゃべって、”松江城の夜桜を見に行く”と言い残して出て行った」
「ポーランド人?」ヴィトールドは、目を輝かせた。
 わけがわからない世界だが、この世界にはポーランド人は存在するらしい。彼が住んでいる世界にはポーランドという国は正式には存在しないが(注:第一次世界大戦後、ポーランドの独立が認められるのは1919年6月28日のことである)、ここには<ポーランド人>がいるらしい。ますますもって、よくわからなくなった。
 ヴィトールドは、隣に座っていた男性に、「今日は、何月何日ですか?」と聞いてみた。
「4月9日だよ」という答えが返ってきた。間違いない。
 しかし、壁にはおかしなカレンダーが掛けてある。
「・・・2015年?」ヴィトールドは目をぱちくりさせた。
「ああ。今日は2015年4月9日だ」男がそういったとき、彼の胸元で変な音がした。ヴィトールドが驚いてみていると、男は何か四角いものを出し、その箱を耳に当てて「もしもし?」と言った。
 2015年? ヴィトールドは混乱した。なんだそれ? 今日は、1919年4月9日だったはずだが?
 彼は混乱して男を見ていたが、男は一人で何かをしゃべり、しきりに頭を下げている。誰もいないのに。まったくおかしな人だ。
「・・・だいたい、その雑種犬も宍道湖で拾ってきたんだろう?」主人がまだぼやいている。
「この犬は、雑種犬じゃないの。<純血種満載犬>と呼んでちょうだい」少女が答え、男たちは笑い出した。「それに、この犬は拾ってきたんじゃないわ。引っ越すことになって犬を手放さなければならなくなった老婦人からいただいたものなのよ。この犬の父方の祖父は、セント=バーナードとシェパードのミックス犬、父方の祖母はゴールデン=レトリバーとラブラドール=レトリバーのミックス犬、母方の祖父はチワワとマルチーズのミックス犬、母方の祖母はミニチュア=ダックスフントとトイ=プードルのミックス犬なのよ」
 ドヤ顔で言い終えた少女の足下で、犬が同じ表情でおすわりをしていた。ヴィトールドには犬の種類はよくわからないが、確かにこんなおかしな犬は見たことがない。顔がセント=バーナード、胴体と短い足はダックスフント、体の大きさはチワワに違いない。だが、どのあたりがシェパードで、どこらへんがゴールデン=レトリバーなのだ? それ以外の犬種についてはよくわからないが。
 その二人の後ろに、大きな箱があった。ヴィトールドは、絵画だと思って気にとめなかったのだが、その絵は動いていることに気がついて、彼は驚いた顔をした。
 男の一人が、ヴィトールドの視線を追って、ワイドスクリーンのテレビ画面に視線を移した。
「そういえば、昨日、<半にゃライダー3>が松江にやってきたんだってね。あいかわらずの人気だよな。なんでも<半にゃライダー5>が、マンハッタンでロケが始まるとか、始まったとか、そんな噂だったな」
「ははは」もう一人が笑った。「それよりも、柳の下にドジョウがいるかどうか、だよな。どうだろう、今度は、この雑種犬を主人公にしてーーー」
「純血種満載犬」少女は言い直した。「無理無理。カピにはそんな芸当はできないわ。この子は、ちょっと訳ありの人を見つけることしかできないわ」そう言うと、かの女はヴィトールドに言った。
「わたしは、スティーヴの大ファンなの。でも、あなたは、彼を知らないようね」そう言って、少女はポケットから、さっきの男が出したのと同じような小さな四角い箱を出した。「見て。この人がスティーヴ。スマホの待ち受けにしてるんだけど、どう、イケメンでしょ?」
 そう言われて差し出された画面には、ヴィトールドと同年代の若者が写っていた。彼と同じようなブルーの目をしているその若者の髪型は、彼がこれまで見たことがないようなものだった。スマホだの待ち受けだのイケメンだのと、知らない単語が次々と出てきて、彼がなんと言おうか考えているうちに、画面は真っ黒になった。壊れたのだろうか? スマホとやらは、おかしな機械だ。
「うーん・・・なんだか、寝起きの頭みたいだな」ヴィトールドが苦笑したように言うと、主人がにやりとしてうなずいた。
「初めて意見が一致したな。今時の若いのは、こんなニワトリ頭が好きだと言うんだから、わからねぇよな。せめて、こいつが、あんたみたいにきちっとした髪型をしていたら・・・」
「・・・サラリーマンみたいでおかしいわ」レミが言い返した。
「サラリーマン、か。それ、いいね。普段は普通のサラリーマン。危機が迫ると、ぱっと変身して・・・」男が言った。「スタントマンとしてスカウトしようと思ったんだが、言われてみれば確かに主役級の顔だよな。ちょっと目立つ傷痕だが、特殊メイクで何とかなるだろう。この人と、あの雑種犬をセットにして・・・」
「純血種満載犬」レミが疲れたように言い直す。
 そのとき、電話を終えた方の男が言った。「半にゃライダーとスーパーマンを足したような話を作っても、いまどきの子どもに受けるとは思えないよ。そもそも、主人公は犬ではない。それよりも、スタントマンの話なんだがね」
 ヴィトールドはスタントマンとやらがどういうものかはわからなかったが、うなずいてみせた。
「本当に、動きが俊敏ですね。どこでトレーニングされているかわかりませんが、本当にいい動きですね」
「先の大戦では、大佐でしたから」ヴィトールドがいった。
 青年は、はっとしたようにヴィトールドを見つめた。
「先の大戦? 大佐?」ヴィトールドと話している男は、混乱したような顔になった。「・・・ああ、そんな映画の主役を務めたことがおありでしたか? 残念ながら、その映画をまだ拝見しておりませんでね。失礼ですが、映画のタイトルは?」
 ヴィトールドは答えようとして、大きなテレビの画面に視線が釘付けになった。なんと、猫がおかしな仮面をかぶって、何か言っている。『倍返し』って何だ? 『世界中の猫のあこがれ』ってどういうことだ?
「そういえば、自己紹介がまだだったわね。わたしはレミっていうの。この子はカピ。そして、彼は、ジョリクール」
 ヴィトールドは、そこまで聞いて少女が冗談を言っているのだと気がついた。その青年は、どう見ても猿ではなかったからだ。
 青年は頭をかいた。「あなたと同じですよ。ここに来ると、勝手にあだ名をつけられてしまうんです」
 そして、彼はポーランド語に切り替えた。「あなたは、わたしの兄にそっくりなんですね。もしや、あなたもポーランドの方ですか?」
 東洋風の容貌を持つ青い目の青年がポーランド語で話しかけてきたので、ヴィトールドは驚いた。
「わたしは、レオン=コヴァルスキーと申します。父がポーランド系フランス人、母が日本人なんです。わたしは、二十歳の時に日本国籍を取り、正式に日本名を名乗るようになりました。日本名は、鍛冶麗音(かじれおん)と申します。コヴァルスキーは「鍛冶屋」という意味だからです。父は、ヴァイオリンとヴィオラを製作しています。日本に優れた()製作者マイスターがいると聞いて来日して、そこで、日本人女性と結婚して・・・。今では、両親は長野で暮らしています。父には、結婚前にイギリス人の恋人がいて、二人の間に生まれたのが<UK3>のスティーヴです。父親が同じでも、ぼくたち、あまり似ていないでしょう?」
 そう言うと、彼は日本語に切り替えた。
「内緒話をしているとレミに思われます。日本語で話しますね」麗音が言った。「わたしは、東京の大学生で、春休みでこっちに来ていました。休みが終わるので、東京に戻る前に一緒に花見でもしようと思って、誘いにきました。よかったら、あなたがたもご一緒しませんか? わたしたちが二人きりにならない方が、安心できますよね?」最後の方は、主人に向かっていった。
「そうだな、二人きりでないのなら、外出を許可しよう」主人がしぶしぶ答えた。
 目を丸くして聞いていたヴィトールドに、麗音が言った。
「もしかして、レミを中学生かなにかだと思っていませんよね? この子、童顔だけど、これでも大学生」
 レミはぷっと吹き出した。
「それでは」ヴィトールドはそう言い、ポケットから財布を取り出した。
 全員の視線が財布の中身に釘付けになった。
「・・・あなたは、古銭のコレクターなんですか?」麗音が訊ねた。「見たことがないような硬貨ですが、本物ですか?」
 ヴィトールドははっとした。そうだ、この時代は2015年だ。こんな古いお金が流通しているはずはない。
「もちろん、本物ですとも」そう言って、ヴィトールドは店主に金貨を見せた。
「ヘルヴェティア? そんな国、聞いたことないぞ」主人は、ヴィトールドが差し出した金貨をじっと見つめていった。
「スイス=フランです」ヴィトールドが答えた。
「スイス=フラン? この間ニュースに出てたヤツか? ノーノー。そんな物騒なのは受け取れない。せめてユーロにしてくれないとな」主人の顔が険しくなった。「そういえば、昨日の奴らもおかしなことを言ったなぁ。小切手しか持っていないから、って出してきたが、聞いたことがないような銀行でな。『せめてアメリカの銀行だったらいいのに。(クレジット)カードはないのか?』って聞いたら、『ここでは、トランプでも支払いができるのですか?』と聞きやがった」
「でも、本物の金貨ですよ、これ」麗音が言った。「きれいな模様だし、アクセサリーにしてもいいんじゃないかな?」
 そう言うと、麗音はヴィトールドに言った。「我が家では、古くから女の子が生まれると金のメダイを贈る習慣でした。ですが、今では男の子の誕生の時にも作ることになっています。ただし、男の子用には、名前入りではないものを作らせます。やがて、妻となる女性に、我が家の家紋、その女性の名前と、男性の姓を刻んだものを贈るためにね」
 ヴィトールドはびっくりしたように麗音を見た。
「曾祖父のコルネリウスが、曾祖母のシャルロットにプロポーズしたときにそうしたのだそうです。もっとも、ネックレスをプレゼントした曾祖父というのは、祖父の本当の父親ではなく、二度目の父親だったそうですが。祖父は、ヴィトールドという名前の自分の本当の父親のことを覚えていないのですが、新しい父親のことが大好きで、自分もプロポーズの時、祖母に同じことをしたんですって。だから、わたしも、いずれレミに・・・」
 コルネリウス? シャルロット? ヴィトールド?
 ヴィトールドはその話の登場人物名に面食らった。そして、それが偶然の一致ではないと悟った。この人物は、自分の正体を知っているのだ!
 近い将来、シャルロットは自分と結婚するのだ。そして、二人の間に生まれた子どもがまだ幼いうちに二人は別れて、かの女はコルネリウスと再婚する? それが、わたしの未来、彼の過去なのだ。そう言われてみれば、この青年には、どこかシャルロットの面影がある。シャルロットを東洋人男性風にすれば、こんな顔になるだろう・・・。
 主人は麗音をにらみつけた。「まだ、結婚を許可した覚えはない」
「この人は、わたしの運命の人です。父が母の運命の人だったように」レミが言った。「父は、わたしが宍道湖から変なものを拾ってくる、というけど、母も父を宍道湖で見つけたんです。そうよね?」
 主人は小さくため息をついた。
「・・・あのころは、就職難でね。大学を出ても、ちゃんとした仕事に就けなくてね」主人が言った。「本屋で見た<アスキー>を立ち読みしているうちに、プログラマーになったら食べていけるんじゃないかと思ってね、その足で専門学校の門をたたいたんだ」
「そういえば、<週刊アスキー>も、ついに廃刊になるんだってね」男の一人が口を開いた。
「違うよ。紙ベースの<週刊アスキー>がなくなるだけで、電子版になるんだよ」もう一人が言った。
「・・・そのときまで知らなかったんだ。プログラム言語がたくさんあるなんて。それで、どれを選択すると聞かれたとき、<おおブレネリ>という曲を思い出してね。<♪ヤッホー フォートランランラン>ってのがあったな、って。なんか楽しそうだから、それならたぶん覚えられそうだ、と思ってFORTRANにしたんだけど、それが裏目に出ちゃってね」
 三人の男性たちは笑い出した。
「フォートラン、なんて、今どき情報処理試験にも出てこないよ」一人が言った。「せめて、C言語を選ぶべきだったな」
「そもそも、あの歌はそんな歌詞じゃなかった」もう一人が言った。
「それでスイス人を恨むのは、筋違いだと思うな」三人目が言った。
「それでいて、なかなか壮絶な人生だな」最初の男が言った。
「・・・結局、専門学校を出ても、プログラマーにはなれなかった。どの会社を受けても、<経験者に限る>って。今だったら、試しに入社できるシステムもあるのにな。早く生まれすぎたんだな」主人がため息をついた。「・・・で、何社目かの受験に失敗したあと、なぜか宍道湖に来ていた。自殺するんじゃないか、と早合点した女性が、むりやりここに引っ張ってきた。先代の親父さんが作ってくれたウナギがとてもうまくてね、これ以上うまいものがこの世にあるとは知らなかった。気がついたら、こんなところでこんなことをしている。ところが、一粒種の娘も、母親と同じような子で、やたらと宍道湖からいろいろ引っ張ってくる。だが、麗音、一つだけ言っておく。この<大衆食堂>の後継者にならないんだったら、娘は決してやらないからな、覚えておけ」
 麗音はにやりとして答えた。「もちろん、覚えておきますとも。でも、今は、劇に夢中でしてね。やっともらった主役ですから」
「・・・あら、専門のヴィオラはどうしたの? コンクールに出るんじゃなかったの?」
「天才的な腕前だった曾祖父譲りの才能だといわれて、音大にまで入ったけど、演劇の方も捨てがたくてね」
「それにしても、オーディションの種類を選びなさいよ。目に入ったオーディションを受けまくるのもどうかと思うわ」レミがため息交じりにいった。「この前は<レ=ミゼラブル>で、今度は<金色夜叉>でしょう? 一体何がやりたいのかわからない」
「劇が好きなんだ。何か別の人生を演じるのがね」
 そして、彼は、劇の台詞を口にした。
「『来年の今月今夜のこの月を、僕の涙で曇らせてみせる』」
「よっ! 鍛冶屋!」ポーズをとった麗音に、レミがかけ声をかけ、三人組が笑い出した。
 麗音はふっと笑い顔になり、「そのかけ声は変だよ。調子狂っちゃう」と言った。
 三人組の一人が、懐から名刺入れを出し、麗音の前に置いた。
「今度は、ぜひ、うちの会社のオーディションを受けてください。申し遅れましたが、わたしは、ある映画会社の宣伝部長をしております・・・と申します」
 麗音は、その名刺を見て、ぎょっとしたような顔になったが、にっこり笑って名刺を受け取った。
「ありがとうございます。東京に戻ったら、ご挨拶にまいります」そう言って、彼はヴィトールドをちらっと見た。「でも、わたしが本当にヴィオラをやめてしまったら、この人ががっかりするような気がして・・・」
 麗音は、映画会社の営業部長と名乗った男にぺこりと頭を下げ、ヴィトールドの方を向き直った。
「面白そうな劇でしょう? ある男女の物語で、女性の方が、ダイヤモンドに目がくらんで男を捨ててしまうんです。それで、捨てられた男の名台詞がこれです」麗音がヴィトールドに説明した。「季節は今とは違いますけどね。どうです、女性を口説くにはダイヤモンドですよ。やってみてごらんなさい」
 ヴィトールドは怪訝そうな顔をした。「失恋した、って、どうしてわかったんです?」
 麗音が笑った。「そんな顔をしている男性は、失恋した男性と相場が決まっています。ですが、レミにここに連れてこられたのはわたしが先です。だから、あなたにはかの女はわたさない。あなたには、あなたの運命の女性がいるはずです。今すぐかえって、もういちどかの女に言いなさい。自分にはあなたしかいないと。あなたが無事に結婚してくださらないと、わたしたちが困ります。ダイヤモンドをお持ちでない? それじゃ、これをお使いください。曾祖父が曾祖母にプレゼントしたものだそうですが、あなたのお役に立てそうな気がします」
 そして、彼はポケットから小さな指輪を出して、ヴィトールドの手のひらに押しつけた。サファイアの指輪で、それを囲むように小さなダイヤが三粒ついている。
 ヴィトールドが驚いてみていると、彼は金貨をポケットにしまった。「これは、必ずレミに渡します。わたしは、あなたが、今も、これからもわたしたちを見守ってくださると信じます」
  不思議なことに、ヴィトールドは、彼が<天国から>という言葉を省略したことに気づいた。この青年は、どういうわけか彼が曾祖父のヴィトールドだと言うことに気がついたらしい。
「さあ、こんどは、一緒に花見に行きましょう。松江城に桜の花を見に行くんですよ。ライトアップされていて、きれいなはずです。散りかけの桜は美しいですよ。あなたもきっと、桜の花が気に入るでしょう」
 桜? さくらんぼの木を見に行って、何か楽しいことでもあるのだろうか? ヴィトールドはそう思った。
 ドアを開けると、雨がぽつりぽつりと降ってきた。
「麗音。あなたが、あんな芝居をするから、雨が降ってきちゃったじゃない」レミは恨めしそうに空を見た。
「おかしいな? さっきまであんなにいい天気だったのに」麗音もそう言った。
「そこのビニール傘、持ってっていいよ」主人が声をかけた。「108円の100均傘だから、一人用で、相合い傘はできないよ。残念だったな」
「いまどき、<相合い傘>なんて死語だわ」レミが言い返し、その場の全員にビニール傘を手渡した。「・・・あら? どうしてこんなに真っ暗なのかしら? まだ夜になっていないはずなのに?」
 そう言って、かの女は外に出た。つづいて麗音と三人の男性たちが外に出た。彼らは、ヴィトールドが出てくるのを待った。
 しかし、ヴィトールドは出てこなかった。
 レミは、<大衆食堂>と書かれているドアを開け、声をかけた。
「テラさん・・・?」
 カウンターから主人が言った。「テラさんなら、さっき出て行ったじゃないか?」
 レミは慌てて外に出た。そこにいる男性は4人。ヴィトールドの姿は影も形もなかった。
「・・・テラさん?」レミは泣きそうになって声をかけた。
 麗音は辺りを見回し、ヴィトールドが自分の世界に戻っていったのだと悟った。
 彼は、握りしめていた拳を開いた。そこには、曾祖父ヴィトールドが曾祖母シャルロットに贈ったという、あの古い指輪があった。それを確認し、彼はもう一度指輪をぐっと握りしめた。
『がんばれよ、ひいじーさん』麗音はそうつぶやくと、レミに向かってほほえんだ。「大丈夫、テラさんは、家に戻ったんだよ」



 ヴィトールドはドアを開けた。そのとき、懐かしい時計の音がした。
 おかしい。自分はこれからみんなで<花見>にいくはずだったのに、ここは、自宅だ。しかも、目の前には、心配そうに自分を見つめている女性がいる。彼は手のひらを見た。あの指輪は、確かにそこにあった。さっきより新品に見えるが。
 足元がふらつく。<日本酒>とやらを飲み過ぎたらしい。
「お願い、一緒に歩いてちょうだい」女性がじれったそうに言う。
「それは、もしかして、プロポーズしてくれているのか? 光栄なことだ。わたしもあなたと一緒に歩きたい」ヴィトールドはそう答えた。
「そういう意味じゃないわ・・・」シャルロットは泣きそうになっていた。
 不思議だ。この女性は、麗音にそっくりだ。彼が言うとおり、かの女はわたしのプロポーズを受けてくれる気があるらしい。
 ヴィトールドは、シャルロットの目をのぞき込み、ゆっくりとプロポーズの言葉を口にした・・・。

PageTop▲

定例月次会見2015年4月

定例月次会見

おひさしぶりでございます。
今月は、「黒鳥の歌」を1つ更新します。
その他の予定は、現在のところ未定です。

PageTop▲

定例月例会見2015年3月

定例月次会見

こんにちは。
野良猫に声をかけると、かなりの確率で返事されるcambrouseです。

今月も多忙につき、メイン記事の更新はありません。(←ないはずです。)

PageTop▲

定例月次会見2015年2月

定例月次会見

今月も多忙につき、メイン記事の更新はありません。(←ないはずです。)

でも、裏記事、書いてみようかな?

PageTop▲

定例月次会見2015年1月

定例月次会見

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

さっそくですが、今月も多忙につき、更新はありません。(←と思います。)

PageTop▲

定例月次会見2014年12月

定例月次会見

今月も多忙につき、更新はありません。(←と思います。)

PageTop▲

定例月次会見2014年11月

定例月次会見

今月も多忙につき、更新なしです。(←今月も、更新しない気満々です。)

PageTop▲

定例月次会見2014年9月

定例月次会見

月に一度の訪問日。なんせ、ほっとくと広告が出ますから。

久しぶりすぎて、IDとパスワードを忘れそうになりました。
(定冠詞付きだっけ? 白鳥は単数形だっけ、複数形だっけ?って。われながら、変なIDをつけたものだと思いますが、3度目の正直---第三希望---だったんで・・・。)

それにしても、開店休業中、って看板出しているのに、どうして訪問者がいるんでしょうね?

PageTop▲

ごめんなさい、開店休業中です。

定例月次会見

当分の間(・・・っていつまで?)お休みをいただいております。

本体が自転車操業中なので、こちらは開店休業状態です。わざわざおいでくださってありがとうございました。

PageTop▲

ごあいさつ(エイプリルフールの企画ではありません)

白鳥の歌とは

このブログのメインとなるコーナーを開始します。

白鳥という鳥は、見た目はそれなりに美しく、優雅な印象を与える鳥です。
にもかかわらず、鳴き声(さえずり、とは言いがたいですよね?)は、どう聞いてもいまいち。こんな美しい鳥ならば、さぞかし美しい声なのだろうという人間の願望とは、まるで無縁の鳴き声。それでも、これだけ美しい鳥ならば、本当はきれいな声なのだろう・・・そんな気持ちからか、人間たちはいつしか、白鳥は最期の時、美しい歌を歌うのだ・・・という伝説を作り上げたそうです。


このブログは、「年代記」という小説ブログから派生したブログです。
その小説の中で「白鳥の歌」というレコード会社が登場します。
(現時点では、まだ登場していませんが・・・)
そのレコード会社は、あるピアノコンクールで知り合った二人の男性が始めた会社です。本体の小説で、まだその場面が登場しませんので、二人の名前はここでは書きません。ネタバレになりますから。
第一次世界大戦が終了したあと、かつてピアニストを志した二人は偶然にパリで再会します。そのとき、一人は右手を失っており、もう一人は左手を失っていました。右手を失った方の男性は、左手だけで演奏活動を再開したところでした。そして、左手を失った男性は哲学を学ぶ大学生でした。彼は、自分の存在意義を探しているところだったのです。再会した二人は、再会を祝して飲みに行き、たまたまそこにいた大学生の方の友人たち(この二人のほうが、実は小説中では大物です)と意気投合し、いつの間にかレコード会社を作ろうという話にまで発展してしまいました。

「白鳥は、最期に美しい歌を歌うんだそうだ。おまえたちだって、少なくても一度は観衆を感動させたことがある人間だ。自分の音楽人生がこれで終わりだというのなら、最期にもっとすごい歌を歌ってやれ。ただし、自分の力ではなく、他人の力でな」

こうして、彼らは、自分たちの会社の名前を「白鳥の歌社(Le chant du cygne SA)」と名付けました。
そして、この「白鳥の歌」は、彼らの音楽活動のために作られた雑誌の名前でもあります。


このコーナーは、雑誌「白鳥の歌」の一部として企画されました・・・という設定です。

コンセプトは、「小説の中に出てくる(本当は実在しない)音楽を(いかにも実在する音楽であるかのように)紹介する」(強調文字以外が重要!)です。

さて、どんなコーナーになりますか。

(この紹介文は、予告なしに変更することになりますが、ご了承ください。)

PageTop▲

まえがき(のようなもの)

未分類

「ブログ小説制作日記・別館」へようこそ。

このブログは、「年代記~ブログ小説~」という小説の制作日記として作られた「ブログ小説制作日記」という日記ブログから、小説そのものの解説部分だけを取り出して、別ブログとして作られたものです。
このようなブログを世間では「サテライトブログ」と申すそうですが、衛星ではなく、せめて惑星レベルまで、できれば独立した恒星と呼ばれるよう力を入れていく所存です。


さて、このブログのメインは、「年代記~ブログ小説~」の中に登場する音楽の解説である「白鳥の歌」コーナーです。本来なら、一つの曲に一つの記事を当てたかったのですが、一記事につけられるタグの数が全部で10だと聞きました。そのため、10以上の章で取り上げられる音楽については、その2・その3・・・という記事をあげていかなければならなくなりますが、そういう事情からですのでご容赦ください。なお、なるべくネタバレを防止する目的で、小説の進行に合わせて記事の内容を変えていきます。以前読んだ記事でも、何度か読み返していただけると幸いです。


今のところは「建設予定」でありますが、小説の中に出てくる用語解説、各章の解説記事のコーナーを順次作成していこうと考えています。


本来なら、このブログのジャンルは「音楽」ではないか、とも考えましたが、もともと小説の解説をするために作ったブログですし、解説する曲のほぼ8分の7は「実在しない曲」なので、ジャンルを「小説・文学」としました。


新しくできたばかりの別館ですが、今後ともよろしくお願いいたします。

(14.3.14追記:ファビコンを設置しました。白鳥柄にしたかったのですが、絵が描けなかったので、ダジャレでマークを決めました。ダジャレの解説をするのも野暮ですが、白鳥→スワン→吸わん→禁煙マーク、ということで。)

PageTop▲